sacqueline’s diary

久しぶりに読書にはまりました。読んでいった本の覚書と読書感想です。

場所/ある女 アニー・エルノー 堀茂樹訳

場所は父の死後 ある女は母の死後 ともに著者の父のこと、母のことをひとりの人として客観的に綴った作品。

場所は、著者と父の差異、距離感、お互いの視点を思い出もまじえ書いた作品。

 

 ある女は、今も強い感情の嵐を私に残している。

それは、三年前に永眠した母のことを様々と私に思い出させたから、まだこころがとてもふるえてくる。

 ある日、彼女の髪をブラッシングしはじめた。それから、手を止めた。すると、彼女が言った。「あんたに髪をやってもらうのは、いい気持ちだわ」その後は、私はいつも彼女の髪をブラッシングした。 というところから涙が溢れてあふれて仕方がなかった。 たぶん、愛おしさ、愛をとても感じたから。

言葉にすると陳腐だけど。

 私のことだけど…私は母を亡くして、私の母としてではなくてはじめてひとりの女性として客観的にみることができた。ひとりの女性としての母を肯定的に捉えることができた。私はもう母に会えない、話せない。時間とともにこころの奥のほうにしまったあれこれが、ある女を読んでまた蘇っちゃった。

 

 こんなふうにちゃんと言葉にできる著者が本当に羨ましかった。

 

素敵な本に出会えたな。